JaSST Tohoku実行委員ブログ

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WACATE2017 冬に参加してきました!

こんにちは。JaSST東北実行委員の@ToshiManaPlus1です。
2017年も終わりに近づいており、忘年会シーズンになってきました。
今年を振り返りつつ、来年への勢いを付けたいと思い、
若手を中心としたソフトウェアテスト技術者が集まる勉強会「WACATE2017 冬 ~すべてがTになる~」に参加してきました。

WACATE2017 冬 ~すべてがTになる~ 開催概要 - WACATE (ソフトウェアテストワークショップ)

 

WACATEとは


「WACATE」とは神奈川県のホテルを借りて、一泊二日の合宿形式でひたすらソフトウェアテストについて学ぶことができる勉強会です。名前の通り若手エンジニアをメインターゲットとしており、座学だけでなく、濃厚なワークを体験できることが特徴として挙げられます。「WACATE」とは「Workshop for Accelerating CApable Testing Engineers」の略称であり、「加速」をキーワードとして参加者が成長できる場づくりが行われています。年2回開催されており、「1つのテーマを深く」の夏開催と「多くのテーマに触れる」冬開催でそれぞれ特色があります。冬開催の今回は多種多様なワークショップで構成されており、多くの知見を得ることができました。

JaSST東北では毎年ワークショップを実施しているため、特にワーク部分に着目して参加した感想を書いていきたいと思います。(数が多いため、1つあたりの感想は少な目です…)


BPPセッション

「WACATE」では、参加申し込みをする際にポジショニングペーパー(PP)という「参加の意気込み」などをまとめた書類を提出する必要があります。前回の「WACATE2017 夏」で最も優れたPPを書いた人によるセッションがBPP(ベストポジショニングペーパー)セッションになります。
今回は@koooooooooookiさんによる自己理解に関する発表でした。自分のマインドとの向き合い方に関するヒントを示す、あまり見ないタイプの発表で、興味深く聞くことができました。

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ISONO:Reboot ?なんで、私がベストスピーカー賞に??

技術論文の書き方を学ぶセッションでした。研究職でない方が中々論文を書くことはないかと思いますが、論文にすることで自分がやっていることを体系立てて整理・評価できることがメリットとして挙げられます。また、自分がやっている取り組みを査読という形で第三者から客観的に評価してもらえる、ということもすごく力になるとのことでした。論文を書きましょう!

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違いを捉えよう~場の力を引き出すカギを手に

ファシリテーションが得意な講師からは、「違い」に着目するワークが行われました。同じチームで些細なことからすれ違いが発生して上手くいかないときでも、共通点や違いを理解することで上手く活かす道が見つかるよ(意訳)という内容でした。一枚の画像から受けた印象を各自で出し合ったのですが、同じインプットをしているはずなのに、着目点の違いや表現の違いなどでもアウトプットが大きく変わる、ということを学べたワークでした。


ソースコードを読んでみよう

ソースコードをレビューして不具合を見つけてみよう、というワークでした。
ソフトウェアのシステムテストは内部構造に着目しないブラックボックステストが多いですが、ソフトウェアの内部を見ることでシステム特有の不備を見つけよう、という内容になります。
私は開発者なので、ソースコードレビューは比較的得意な部類でした。しかし、単純な不具合でも上手く意識できないと検出できない場合があり、得意だからこそ不具合を出さないように慎重に見ていく必要があると感じました。

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ユーザビリティテストをやってみよう!

アプリケーションの使用感について評価を行うユーザビリティテストのワークでした。二人ペアになって、テスト設計からユーザビリティテストの一連の流れを実際にやってみることができる、とても貴重なワークでした。ユーザビリティテストに必要な技法はインタビューのような対話に関する技術が多く、一般的なテスト技法とは違っていて新鮮味がありました。一時間ではもったいない、もっと時間をとった構成で受けたいと思うワークでした。

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コミュニケーションで大切なことは「伝わったこと」

コミュニケーションの難しさをお絵かきで体験するワークでした。一方が絵を口頭で伝えて、もう一方がそれを紙に書く、というのを行ったのですが、自分のイメージが上手く表現できない/伝わらないことを知ることができました。先に全体観を共有したり、既知の尺度(長さをcmでなど)表現するといったアイディアもたくさん出てきており、楽しみながら学ぶことができました。


みんなのメトリクス

業務であれば様々なデータを取っているかと思います。ここではデータ計測の意義について考えるワークを行いました。計測できるデータは何でも計測したくなりがちですが、計測するにもコストがかかります。「なんの為に測定するのか」をチーム内で議論して、測定したデータがどのように業務の助けになるのかを整理しました。データがどのように使われるかを知ることによって、ポジティブな感情で測定作業を行えるようになります。

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直交表に触れてみよう

膨大なテストケース数になりやすい「組み合わせテスト」に対して、効率的にテストケース数を削減できる「直交表」のワークでした。「直交表」は「実験計画法」に基づいて効果的なテストができる組み合わせを抽出する手法です。しかし、なぜテストケースを大幅に減らせて、できる限り高い効率の良い(バグを検出しやすい)テストケースを抽出できるのかが直観的に理解しにくいところがあります。本ワークでは直交表によって抜き出されたテストケースがどのようなものかを段階的に追っていくことで、初心者にも理解しやすい内容となっています。その気配りにワークを作る側として学ぶことが多かったです。

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インシデントレポート:Reboot

いわゆる「バグ票」とも呼ばれる、不具合結果の記録票の書き方についてのワークです。私は業務でインシデントレポートを書くことがほとんどないのですが、ワークのチーム内のテストエンジニアの方からは「タイトルで内容が分かるように記載する」「(効率のため)開発者とのやりとりが少なくなるように再現条件なども明確に書く」など、実体験に基づく話をたくさん聞けて、学びの多かったワークでした。

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設計品質とアーキテクチャ

最後は小井土さんによる、開発者目線からみた品質の話でした。特にシステムアーキテクチャについて語られていました。システムアーキテクチャとは、システムの品質特性を強制する目的で導入するシステム構造による仕組みを指してます。講演内では「レシピ(具体的な手順)」ではなく「ガイド(適度に抽象化された指針)」、という言葉が挙げられておりとても印象に残っています。ワークでは目的を達成するための「ガイド」の設計を体験することができました。

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クロージング

クロージングセッションでは、参加者が最も加速感のあるポジショニングペーパーに対して投票を行い、ベストポジショニングペーパーが決まりました。今回は福岡からきて、全国JaSST行脚*1を行っている @yoshitake_1201さんが受賞しました。おめでとうございます!


おわりに

多種多様なワークショップがあり、内容だけでなく運営方法についても勉強になりました。良いところはJaSST東北にも反映できるように色々試してみたいと思います。
意欲にあふれた参加者や運営の皆様と触れ合うことで、こちらもやる気も頂きました。2018/5/25(金)のJaSST東北でも参加者に満足していただけるようなHAYST法のワークショップの準備を進めています。JaSST東北に参加していただく方々が加速する助けになれるように、精一杯頑張っていきたいと思います。

*1:JaSST'17 Tohokuにも来てくれました。感謝!