JaSST Tohoku実行委員ブログ

JaSST Tohoku実行委員のあれこれを載せていきます、たぶん、きっと。

JaSST2016東北でVSTePやってみた!

【はじめに】

JaSST2016東北が終わって約1ヶ月が経ちました。

結果は大成功でした。アンケート結果を見てもべた褒めで、正直、信じられない位の大成功でした。にしさんを始め、安達さん、水野さん、JaSST東北に参加してくれた皆さん、スタッフのみんな、本当にありがとうございました。

JaSST東北で実施した内容については、JaSSTのHPおよびレポートを見て貰えば分かるので、ここではスタッフの裏側と言うか、色々準備したことを記載しておきます。

今後、これだけの熱量(=やる気)が出るか分からないので、記録として残しておくことにしました。

他のJaSSTで同じ様なことを行う人がいるかも知れないので、参考にして下さい。

色々言いたい人もいるでしょうが、やったもん勝ちですwww


【JaSST2016東北の概要】

JaSST東北のHPを見て貰えば分かりますが、今年のJaSST東北は「テスト開発しちゃいなよ」をテーマに、電気通信大学のにしさん(@YasuharuNishi)を招いてVSTePに挑戦しました。
午前中がにしさんによる基調講演。午後が参加者全員によるVSTePワークショップでした。


【今回のコンセプト】

JaSST東北の実行委員長をネモさん(@nemorine)から引継いだ時に、以下の思いから、今回の「一つのテーマに終日取り組む」形にしました。

思い①:にしさんを東北に呼ぶ。

4年前のJaSST東北が立ち上がった頃に、一度にしさんが仙台テスト勉強会に来て、お話ししてくれました。その時の話がとても面白くて、その頃から是非JaSST東北で基調講演をやって欲しいと思っていました。
(確かにしさんと話した時の第一声が「CMMiやってますか?」で、その次が「CMMiやって良くなりましたか?」だったと記憶しています)

思い②:テストアーキテクチャ設計を学びたい。

JaSST2015東京のテスト設計 コンセプト コンテストの総評の時に、にしさんが「テスト要求分析、テストアーキテクチャ設計を行うのは当たり前になって来た。テストアーキテクチャ設計のデキで勝敗が決まった」と解説をしていました。これに僕は衝撃を受けました。「テストアーキテクチャ設計ってそもそもよく分からないし、東北でそんなことを行っているのは、(実行委員を除いて)僕は聞いた事がない。東京に比べると東北のソフトウエアテストは遅れているかもしれない・・・」と考え、東北でテストアーキテクチャ設計を学ぶイベントをやりたいと強く思いました。

思い③:スキルを残したい。

JaSST東北は2015年で3回を数え、毎回楽しいのですが、楽しくて終わってしまって、いまいちスキルとして残らない感じがしていました。昨年、安達さん(@kitanosirokuma)に来ていだだき、レビューに関する講演をしてもらったのですが、参加者から「演習時間が短くて、もっとやりたかった」との意見を聞きました。その時に「これなら一つのテーマで1日かけてもいいんじゃないか?午前に講義して、午後にその演習(ワークショップ)を行う感じで」と考えました。私もそうですが、講演等でいい話を聞くと、すぐその気になるのですが、実際に手を動かさないと身に着かず、すぐ忘れてしまいます。そのため、ワークショップで参加者が手を動かすようにしたいと考え、今回の構成にしました。

思い④:JaSST東京の劣化コピーはやりたくない。

2千人が参加するJaSST東京は規模が大きく色々な内容が「広く・深く」入っています。JaSST2015東京の実行委員の方が「JaSST東京はデパート。何でもある」と話していましたが、その通りだと思います。東北(というか地方)で東京と同じ規模のイベントは出来ないと考えます。同じ事をやろうとしても「中途半端で浅く」なると思います。ならば逆に「狭く・深く」やろうと考えました。JaSST東京の劣化コピーなら、JaSST東京に参加した方がいいので、「JaSST東京と違うこと」をやろうと考えました。


【準備作業】

上に書いたコンセプトは、JaSST2015東北を実施した後の振り返り会でほぼ決めてました。
今思うと1年前ですね。もちろん、にしさんへのお声がけも何もしてないので、本当に実現できるかは分かりませんでした。


会場手配とにしさんの快諾

JaSST東北は会場費の節減のため、仙台市の公的施設を借りて実施しています。会場の手配は6ヶ月前の抽選で決まります。このため、11月頭にならないと会場と開催日程が確定しません。今回は抽選で仙台駅近くの会場が当たったので、良かったです。
会場と開催日程が決まったので、にしさんへ基調講演とワークショップを行いたい旨を伝えたところ快諾をいただきました。
その時に、にしさんから「ワークショップを行いたいなら一度実行委員会でVSTePをやってみて下さい」とのお話をいただき、実施することになりました。
(この時点ではこんな展開になるとは想像もしていませんでした・・・)

12月の失敗

12月27日にスタッフが集まり、東京からメイさん(@hinac0)にも参加してもらい、電気通信大学のにしさんの研究室資料をもとに、VSTePを実施してみました。テスト対象はLhaca(圧縮解凍ソフト)で、まず解凍機能のみやってみました。
結果は大失敗。散々でした。
午後いっぱい作業時間があったのですが、テスト観点図の作成で時間がなくなり、しかもテスト観点図をどこまで作ればいいのか、よく分からなくなって終わりました。

ここで非常に厳しい認識に至りました。
「これはにしさんに教えてもらわないと無理だ」と思い、にしさんに仙台に来てもらえないか、相談することなりました。


2月21日 にしさん打合せ

にしさんに相談した所、何と(!)仙台に来ていただける事になりました。正直、来ていただけるとは思ってなかったので、感謝の上に感謝しても足りません。本当にありがとうございました。
2月21日ににしさんに来ていただきVSTePを実施しました。テスト対象はLhacaよりさらに小さいLhasa(解凍ソフト)で実施しました。
にしさんのアドバイスを受け、全部ではないですが、何とかVSTePを理解できました。テストコンテナを作ることによって、前半の観点図の苦労が報われること等、やっとVSTePが少し見えた気がしました。
この時ににしさんから「50人の規模なので、ワークショップはJaSST東北スタッフがモデレータを務めること」「自分(にしさん)は各島を廻り、各モデレータをサポートする」との話をいただきました。50人のモデレータをにしさん一人ができる訳が無いので、もちろん同意なのですが、問題は「我々が本会までにVSTePのモデレートをできる様になるか」が最大の課題になりました。何せ僕を含めてVSTePもモデレートも未経験だったので。

(余談)
にしさんが参加してくれたVSTeP演習の時に、僕がモデレータ役を務めました。こういう時の中心役は大変で、自分の理解度が足りない場合、にしさんに突っ込まれることになります。なので、大変なのですが、逆に一番勉強できる役とも言えます。モデレータ役をやってにしさんに突っ込まれるより、参加者役になって見ている方が楽なのですが、逆にいうと自分の理解が不完全でも誤解したままでも、そのまま終わってしまいます。他人から指摘されるのは辛いかもしれませんが、教えを乞う時はあえて「地雷を踏みに行く」方がいいと考えモデレータ役を買って出ました。恐らくこの時に一番勉強できたのは僕だと思います。

3月5日 VSTeP復習会

2月21日のにしさん打合せの復習会として、3月5日にT-Pad T-Pod(ミュージックプレイヤー)をテスト対象にVSTePを実施しました。
不思議なもので(当然かもしれませんが)、回数を重ねる毎にVSTePの進め方が上手くなっていくのが分かりました。12月はテスト観点図でタイムアップしましたが、テストコンテナまで作成できました。そこで、次はVSTeP未経験者を入れてやってみることにしました。

3月8、9日(JaSST東京参加)

本会のモデレータ役をJaSST東北スタッフが実施するのはいいのですが、残念ながらJaSST東北スタッフは僕を含めて11名しかいません。スタッフ1人、参加者5人で構成しても最大55人しか参加できません。そこで、JaSST東京に参加した時に、JaSST北海道の安達さん、水野さん(@NoriyukiMizuno)にお声がけして、ワークショップのモデレータやアドバイザー役をお願いしました。突然の無理をお願いしましたが、お二人とも快くお引受けいただきました。本当にありがとうございました。水野さんは前日入りして、我々モデレータ初心者に、モデレートする時の注意点等をアドバイスしてくれることになりました。感謝しております。


3月の失敗と「VSTePワークショップの進め方解説資料」

3月25日にVSTePの未経験者を入れてVSTePを実施してみました。テスト対象はLhacaの解凍機能です。
ここで2つの課題が判明しました。
①未経験者の場合、テスト観点図の成果物イメージがよく分からない。また、テスト観点図の次の作業が分からないので、どこまで観点図を作っていいか分からない(テスト観点図作成の完了基準がわからない)。
②いきなりテスト観点を付箋に書き出す様にすると、参加者は仕様書のコピーを始める。
というものです。 

これを解決するため、
①参加者が完了基準や完成イメージが分かるようにVSTePの成果物サンプルを作る。
②ワークショップの進め方(注意点)をまとめる。

ことにしました。

この二つをまとめた資料「VSTePワークショップの進め方解説資料(=VSTePでテスト開発しちゃいなよ)」を作成しました。この資料によりVSTePを初めて行う参加者でも、ある程度進められる様になったと思います。(「VSTePワークショップの進め方解説資料(=VSTePでテスト開発しちゃいなよ)」は予稿集に入れてあります。また、当日のワークショップ終了後に参加者全員に配布しました)

4月9日 VSTePの練習会

4月9日に北海道のネモさんが参加してVSTePの練習会を行いました。テスト対象はカンバンリスト(Webアプリ)です。この日は普段福島にいるJaSST東北スタッフも参加してのVSTeP練習会でした。本来、参加回数の少ない福島組にモデレートをしてもらう予定でしたが、ついVSTePに夢中になってテスト観点図を完成させちゃいました。今までのなかで一番上手くいったと思います。上手くいった要素としては「回数をこなして慣れた」と「テスト対象が、普段仕事で接しているWebアプリだった」ためだと思います。普段仕事で接しているWebアプリだと、テスト観点やその集約化も割とスムーズにできました。
普段福島にいてもJaSST東北のスタッフですので、今回のモデレータを務めてもらう必要がありました。距離的な問題から、練習にあまり参加できなかった福島組は、自社内の同僚を相手にVSTePの練習をするなど工夫して本会に臨んだそうです。

4月29日 にしさん再打合せと「持ち帰って欲しいもの」

4月29日にも再びにしさんに仙台へ来てもらいました。当初は本会の進め方やワークショップのリハーサルを行う予定だったのですが、にしさんより「VSTePのメリットは様々あるが、わずか半日のワークショップでそれを全て理解して貰うのは無理である。今回のワークショップで参加者に何を持って帰って貰うか(=参加者に理解して欲しい事)を明確にする必要がある。そうしないと各モデレータの説明やモデレートの仕方がバラバラになってしまう」との指摘を受けて、丸一日かけて「持って帰って欲しいもの(=参加者に理解して欲しい事)」を検討しました。
検討した結果、「持って帰って欲しいもの(=参加者に理解して欲しい事)」は以下の様に決めました。
(1)テスト観点図作成:①仕様書に無いテスト観点が出る。②参加者全員の合意を得る。
(2)テストコンテナ作成:テストの保守性が向上する。

それぞれの「持って帰って欲しいもの」に対して、どうモデレートすれば参加者が意識してくれるか、参加者へのアドバイスの仕方などを資料にまとめて、スタッフで共有する様にしました。(スタッフの手持ち資料になりました)

この日もVSTePの未経験者に参加してもらって意見等を貰いました。「テスト観点図とテストコンテナの違いが分からない」との質問を契機に、僕を含めて各スタッフのVSTePの理解度の違いが分かりました。貴重な時間を我々の練習にお付き合いいただき、ありがとうございました。

5月の直前練習とモデレートの注意点。

5月12日と15日に、本会の直前練習(リハーサル)を実施しました。スタッフがモデレート役と参加者役に分かれて、本番の進め方をリハーサルしました。
これは僕がスタッフに無理を言って開催したものですが、やって正解でした。スタッフそれぞれの認識がずれていた事が分かりました。また、ワークショップのタイムスケジュールをあらかじめ定めて、全体で同じ時間で作業する様に見直しました。(それまではワークショップの時間配分は各モデレータの裁量に任せる予定でした)。
リハーサルによって、参加者の議論を活発化するための仕掛けなど、細かい準備を行うことができ、本番に備えることができました。僕の無理を聞いてくれたスタッフに感謝です。

前日の水野さんセミナー

北海道の水野さんが前日入りしてくれて、我々スタッフにモデレータの心得や、本会で「持って帰って欲しいもの」を再確認するセミナーを開催してくれました。お忙しい所、本当にありがとうございました。

【開催当日】

にしさんの基調講演資料について

基調講演資料について、にしさんは今回のワークショップ用にかなり作り変えてくれました。電気通信大学のにしさんの研究室資料を見ると分かりますが、VSTePでテスト観点図を作る時に、テスト観点に「品質リスク」等を記載します。ところが、今回はリスク記載は演習の範囲外なので、説明を全部付録側に移動してありました。
また、予稿集が出来上がった後に、参加者からの事前アンケート結果を送付したところ、作り終わった予稿集に更に質問に対する説明等を加筆してくれました。

にしさんの基調講演について

にしさんは、基調講演資料もそうですが、全90分のうち最初の30分をかけて、ひたすら参加者を煽っていました(現状のままで満足している方は、お金返すから帰ってくれとか・・・)。おそらく午後のワークショップに向けて、参加者のやる気を引き出すことに集中していたんだと思います。本当に有り難いです。ワークショップは我々がいくら準備しても、参加者のやる気がないと上手く行きません。午後のワークショップを成功させるために、にしさんは全力で取り組んでくれたんだと思います。繰り返しになりますが、本当に本当にありがとうございました。


ワークショップについて

午前のにしさんの煽りのお蔭か、驚くほど盛り上がり、大成功でした!
お通夜になるんじゃないかと心配していたのですが、そんな事もなくどのテーブルも盛り上がっていました。
お通夜を避けるために、スタッフが話し合ってWACATE等のテストイベントの常連さんたちを、各島に1人座って貰う様にしました。それも上手く行く要因だったと思います。
スタッフの振り返り会では、スタッフの殆どが準備した「持って帰って欲しいもの」を上手く説明できた(=持ち帰って貰えた)と話していました。
反省点としては、常連さんたちに前もって連絡をしていなかったため、ビックリされた方がいらっしゃると思います。突然、申し訳ありませんでした。

【結果と反省と】

結果としては、大成功でした。こんなに上手く行くとは、スタッフの誰も思っていませんでした。にしさん、安達さん、水野さん、JaSST東北に参加してくれた皆さん、スタッフのみんなにお礼を言いたいです。本当にありがとうございました。
最後の懇親会の挨拶で、泣きそうになりました。それぐらい、嬉しい結果でした。

反省点としては幾つかあります。
・他のIT系のイベントと重なった。
・スタッフがVSTePを習得するのに時間がかかり、JaSST東北本体のイベント準備がバタバタになってしまった。
・スタッフ全員がVSTePのモデレータを出来る様になるため、かなりの時間を拘束した。


【最後に】

当然の事ですが、スキルは苦労しないと身に着きません。
苦労してスキルを身につけるか、苦労せず身につけないかどちらかです。

今回はスキルを身に着けること、東北の人達にテストアーキテクチャ設計を知って貰う(=体感して貰う)ことを目的としてここまでやって来ました。
参加者の1人でも、JaSST東北が終わったあと、自分の会社等でVSTePを試してもらえれば、頑張った甲斐があるというものです。

また、今回はスタッフにかなり無理を言いました。何度も「これはチャレンジだから、失敗してもいい」と話しました。「上手く行かなかったら、上手く行くまでやる。3年連続VSTePでもいい」とまで話しました。(さすがにスタッフに止めてくれと言われましたがw)
スタッフのみんなは、よく頑張ってくれたと思います。僕一人では、こんなことは出来ません。本当に感謝の言葉しかありません。ありがとう!


【ちょっとだけ宣伝】

7月2日(土)にVSTePの復習会をします。一日かけてVSTePのワークショップを行いたいと思います。
JaSST東北に参加できなかった方、何かモヤモヤしてる方、是非、ご参加下さい。
TDCサイトで申込み受付中です。

内容:ソフトウェアテスト勉強会~JaSST'16 Tohokuおかわり会~
開催日:7月2日(土)10:00~18:00
場所:戦災復興記念館 第4会議室

   http://www.hm-sendai.jp/sisetu/sensai/index.html#sisetu-annai

参加費:500円

お待ちしています。

 

以上、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 (記)JaSST2016東北 実行委員長 高橋

 

20160624:誤字を修正